第24回(富山)大会あいさつ

日本セトロジー研究会 第24回(富山)大会開催のご挨拶

第24回大会大会長 南部久男(富山市科学博物館館長)

 昨年度の第23回松島大会に引き続き,今年度は第24回大会を富山で開催することとなりました.ここ富山は,本州の日本海側の中央部に位置し,能登半島に囲まれた富山湾に面しています.富山湾の表層は対馬暖流の影響をうけて比較的暖かいのですが,水深1,000mを越える深海には日本海固有冷水塊という冷たい海水があります.そのため表層を回遊する暖水系のブリから,深海に定住するゲンゲのような冷水系の魚類まで,生物相は想像以上に多様です.鯨類はおそらくこのような地形や生物相とも関係して,ここ富山湾に回遊してくるものと思われます.


 富山湾は,江戸時代に鯨類を捕獲した絵図が残っているように,古くから人とクジラとの関わりが深いところです.本大会の特別講演会では,アメリカの捕鯨船に救助された北前船の漂流記をお話しいただきますが,その中で当時の捕鯨の様子を知ることができるかと思います.そして富山湾から佐渡島あたりまでの海域に出現する鯨類と,それらと地域住民との関わりが紹介されます.講演会の中で紹介される北前船のことがわかる「北前船廻船問屋 森家」が富山市内に当時のまま保存されており,一般公開されています.また,本大会の会場である富山市科学博物館には,日本海由来の唯一のツチクジラの全身骨格標本が展示してあります.さらに,ちょっと能登半島まで足を伸ばしていただければ,能登島にすみついたミナミハンドウイルカも見ることができます.この機会にこれらの地を訪問していただければ,より一層富山湾とクジラに関して理解が深まり,さらに関心が高まるものと確信し,皆様にお勧めしたいと思います.


 会員の皆様におかれましては,新幹線開業にむけて槌音の響く富山市にて,雄大な日本の屋根北アルプスの山並みを望みながら日頃の研究成果を発表していただき,活発な議論を通じ,ともに有意義な時間を過ごしていただきたいと思います.

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